Fラン大学進学の罠

 今やK1高卒業生の多くが進学していると思われるいわゆるFラン大学(ボーダーフリー、すなわち名前を書いてお金を納めれば誰でも即合格が貰える大学)であるが、その罠の怖さをほとんどの生徒は勿論、保護者も理解していない。

 4年制大学進学率が2割に乗るかどうかだった筆者の大学受験の頃にもいわゆる3流大学はたくさんあったのだが、何せ大卒が少なかったことと、労働法制が今と違い非正規雇用(アルバイト、契約社員等の有期雇用=使用者の都合で簡単に労働者をクビにできる雇用)を厳格に制限していたので、3流大卒といえども高卒よりは希少価値があったため、正社員(「期間を定めない雇用」=簡単にはクビにできない雇用)であることは勿論のこと、各自それなりに恵まれた就職をしていたのである。     

 ところが、バブル経済崩壊後の長期不況に加え、国民がその劇場型パフォーマンスに踊った小泉内閣以降、労働法制が使用者有利=労働者不利に変更されたことにより、今や労働市場では非正規雇用が普通のこととなっている。その上、今では就職希望者の2人に1人は大卒の時代であるから、大卒でもちゃんとした企業に正社員で就職できるのは事実上一流大学卒に限られてきており、いわゆるFラン大学卒の場合、正社員で就職しようと思えば悪名高いブラック企業(労働者を搾取の対象としてしか考えていない企業)ぐらいしかなく、ほとんどは時給いくらの非正規労働者として社会に放り出されているのである。

 非正規雇用の場合、労働者は将来のための必要な教育訓練を受けることもなくその労働をわずかの賃金を引き換えに使用者に売り渡しているだけであり、たとえ運よく雇用が更新されてきたとしても、常にその有期雇用の期間の終了とともに雇止めされる可能性がある非常に不安定な雇用なのである。

 大枚はたいて子供を大学へやった挙句が時給800円の非正規労働者では保護者は報われないが、悲しいかなこれが現実である。

 晴れてK1高へ進学して楽しく運動に惚けた結果Fラン大学へ進み、その4年後には非正規雇用の罠が待ち構えているのである。そういう生徒は、むしろ実業系の高校へ進み就職に有利な資格を身に付けた方がまだましなのだが、筆者の見るところ、「大学名より高校名」という土地柄から、多くの保護者が子供をK1高に入れることだけに執着してしまっているようである。

 我が子がK1高の制服に身を包み、毎日楽しそうに通学しているのを見るのは、親として誇らしいことかも知れないが、22才時点の我が子の姿を想像してみることも必要だろう。さもなければ、何年か後には、自分のわずかの年金にいい年をした我が子が巣喰うことになりかねないのである。

 部に惚け Fラン経由 非正規へ

2017.12.12