SSHって、いったい誰のためのもの?

  K1高が生徒集めの売りにしているのがSSH(スーパー・サイエンス・ハイスクール)なる怪しいカリキュラムである。どうやら少ないながらも比較的成績の良い生徒がこの売り文句につられて2年から理数科を目指すらしい。筆者はK1高理数科の第1回生であるが、当時はこんな怪しいものはなかった。数学と理科の多い時間割で、新進気鋭の先生達による、ある意味純粋に知的好奇心をくすぐるような授業が行われていた記憶がある。しかし、今ではSSHがあるから理数科がカッコいいと思って志望しているようだ(特に普通科の生徒の修学旅行が北海道なのに、理数科の修学旅行はアメリカなのは彼らの勘違いのエリート意識をくすぐるらしい。)。

ところが、実際に入ってみると、3人1班に分かれて自主的研究とやらに振り回されている。これを終えるのに、普通で3年生の8月まで、班によれば11月までかかっている。あとわずかで受験を迎える3年生が、このような受験勉強以外のことのために秋まで振り回されているのである。何とも呆れてものが言えない。

いったいSSHとは誰のためのものなのか。ひょっとして教師たちのためのものではないのか。わが校ではこのような進歩的教育をやっていますよと宣伝するための。と同時に、いや実はおそらくこちらこそが本命なのだろうが、校長の判断で自由に使える予算のために。一般に、公立学校には校長の判断で自由に使える金はほとんどないのであるが、教育研究目的とあれば話は別なのである。教育研究してさえいればよいのであるから、当該予算の使用目的の範囲内にある限り、国内研修旅行はもとより海外研修旅行でも何でもいいのである。まさか酒宴に使われているとは考えたくないが。

しかし、よく考えてみればわかるはずだが、教育予算はあくまで生徒の教育ためのものなのであって、教師のためのものではない。教育予算は生徒の学力を伸ばすために使われなければならないのである。しかし、SSHの実態は、生徒の学力を伸ばすための物理的時間をあきれる程に奪っており、むしろ生徒の受験勉強の邪魔になっているのである。

K1高は言うだろう。我が校は文武両道の地域のエリート校であるから、サイエンス教育もスーパーでなければならないと。笑ってしまうのだが、そもそもK1高レベルの高校生に大学教育のまね事をやらせて何になるのか。以前もこの欄に書いたように、K1高は地域では1番の高校かもしれないが、全国的に見れば、ただの普通科高校なのである(K1高の内申評価5といっても東京の進学高の内申評価3にも値しないだろう。)。このことは、実はK1高の教師自身が一番よく知っているはずである。なのに、人生で一番重要な大学受験を控えた3年生を秋まで拘束するようなSSHをいまだに続けているのである。

既に地域の中学生のトップクラスの2030人はM高へ抜けている(M高はSSHなどというくだらないものはやっていない。)のであるから、残ったわずかの比較的優秀な生徒をSSHなどという毛ばりで釣って駄目にするのではなく、きっちりと大学受験へ向けた教育をするべきなのである。どうしても教師の自由になる予算が欲しければ、大学受験のない実業高校へ行ってやればよいのである。現に香川高専詫間校はロボコンで全国に名を成しているではないか。彼らは就職に直結するからロボットの研究は理にかなっているのである。

そもそもSSHは、自分の子供は私立有名高へ入れて、公立高校へは入れようともしない文科省の官僚が予算獲得の名目に編み出したものに過ぎないのであって、それに便乗していくばくかの予算をもらって、やれ国内旅行だ、やれアメリカ旅行だと喜んでいるK1高が情けないのである。

いやしくもK1高が地域で1番の進学校を自認するなら、大学受験の邪魔でしかないSSHなど早急に返上して、ちゃんとした勉学指導をしてもらいたい。

気をつけよう 毛ばりの先は 不合格

2015.129

 

追記 今年の1年生も何名かがSSHで明日から2泊3日の東京ツアーに出かけるらしい。しかし、ことわざに言う通り、タダほど高いものはない。こんな毛ばりにつられているうちに、次第に魂を吸い取られていくのである。可哀想なことだ。