医学部入試で女性差別って?

 文科省の局長が息子を東京医科大に合格させてもらうために文科省が実施する事業での選定に当たって東京医科大に便宜を図ったとかで逮捕された事件に端を発して、東京医科大をはじめ多くの私立医科大が入試において女性や多浪生を不当に不利に扱っていたとして大騒ぎになっている。

 筆者などは、私立の医科大が入試を公正にやっていると考える方が甘いのであって、こんなことはずっと古くから行われてきたと考えるべきだと思う。

 今でも覚えているのだが、昭和47年の3月、筆者は東大の二次試験を受けるため、東京本郷の宿に宿泊していた。部屋は数人が泊まれる和室の相部屋だったが、たまたま当日は筆者の他は1人だけだった。食事時間も決められているため、必然的に彼と話をするようになったのだが、彼は北海道出身の1浪生で私立の医大を何校か受けているとのことだった。彼いわく「私立の医大は寄付金が5,000万はかかるから、僕みたいなサラリーマンの子供は合格するのは難しいんだ」。筆者「そうだろうなあ。でも、頑張ってね。」

 あれからほぼ半世紀たった今でも、彼の言葉とその時の寂しそうな彼の顔が筆者の脳裏にこびりついている。当時の5,000万円といえば、今の数億円だろうが、その数字が当たっていたかどうかは別として、サラリーマンには一生かけても払えないような高額な寄付金が入試の合否を左右していたのは間違いないだろう。そうでなければ、町医者のあほ息子が代々必ず医者になって繁盛し続けるなどということはあり得ないことである。

 今回の事件後の報道では、男子の現役受験生には一律に加点し、女子受験生や多浪生には一律減点していたことが問題になっているが、筆者などは、表面的な加点減点よりも、寄付金の額によって合否が左右されているのではないかということこそ問題にするべきと思うのだが、不思議と報道されない。文科省も調べようとはせず、メディアも問題にしない。おそらくは特定の関係者がいい思いをしているからだろう。

 それ以上に筆者が気になるのは、事は私立医大だけだろうかということである。筆者から見れば憲法に定める法の下の平等原則に疑いのある国公立大学医学部医学科入試における「地域枠」制度とその運用こそ問題にするべきである。(詳しくは → こちら「地域枠」制度は受験生の出身校という本人に何ら責任のないことを理由に合否において堂々と差別している上、そこに「推薦入試」という更に怪しい制度を絡ませて、怪しさこれ以上ない制度を作り上げている。この超怪しい制度を利用して、特定の関係者がいい思いをしているのではないかという疑念が筆者の頭から離れないのである。国立大学が法人化して経営の自由度が増したことと引き換えに、様々な誘惑や利権が渦巻いているのではないか。東京地検が「医学部合格=賄賂」と認定するくらいだから、医学部合格が利権の対象となっているのではないかとの疑念が拭い去れないのである。

 世の中は不条理に満ちているのは、百も承知だが、せめて税金で運営している国公立大学の入試くらいは、公平、公正にやって欲しいものである。

 

正直者は

カネなし コネなし 勉強しかなし

 2018.10.31