大学入試合格大作戦

 

1 大学入試の現状を知る

(1)一般入試と推薦入試

 大学入試には、一般入試と推薦入試がある。筆者(iCS石川東大塾 塾長)が大学を受験した1972年頃には、大学入試といえば(少なくとも国公立大では)今でいう一般入試しかなく、大学に入るためには高校3年間の努力の成果が、わずか1回限りの試験で試されていたのである。当時も受験願書には高校作成の内申書を同封して送付していたが、それはあくまで大学受験資格の確認のためだけであり、高校間に実力格差がある中で、高校での定期試験の結果が大学入試に反映される制度(すなわち、推薦入試)などということは考えられないことであった。当時の18才人口に占める大学(4年制)への進学率は、ようやく20%を超えた程度であった(21.6%)。
 ところが、その後、18才人口が年々減少(174万人→119万人)していったにもかかわらず、一方で大学や学部学科の新増設が続き(大学数398→777)、大学の入学定員が増えたため、昔に比べて大学は非常に入り易くなっている(入学者数38万人→62万人)。その結果、2016年(平成28年)の4年制大学進学率は52%に達しており、しかも私立大学の45%は定員割れをおこしている状況(※)である。したがって、現在の受験生は、大学を選ばなければ誰でも大学生になれる状況なのである。一昔前は「高校全入時代」といわれたが、今や実質的に「大学全入時代」なのである。私立大の中には、答案用紙に氏名を記入して入学金等を払込みしさえすれば即合格という大学すらたくさんある。

 そのような中で、大学当局は、特に私立大を中心に、大学自らの生き残りをかけて、入学者の囲い込みを始めたのである。それが、推薦入試の制度(指定校推薦、学校長推薦、、AO入試等)である。表向きは、一発勝負では測りきれない受験生の総合的な能力を見るための制度ということになっているが、客観的にみれば、明らかに産業としての大学の生き残りのための入学者の囲い込みである。その結果、2014年入試では、大学入学者のうち私立大では何と51%、公立大の26%、国立大でも16%の受験生が推薦入試によって入学している(※)のである。

 

(2)大学間格差の増大
 以上を見れば、高校生の君は、「推薦入試で入れそうな大学を受ければいいや」とか、「最悪、定員割れしている大学に入れればいいや」などと思うかも知れない。しかし、よく考えてみよう。大学進学率が52%に達しているということは、大学卒業時点で2人に1人は大卒ということであり、今や大卒というだけでは昔ほどの希少価値がなくなっているということである。俗に「石を投げれば大卒に当たる」とまで言われる今日においては、大学間、更には同じ大学であっても学部学科間によって、社会的な評価に大きな格差が生じているのである
 この大学の社会的な評価の差は、学生の就職活動の段階になって、当該大学・学部学科卒(見込み)であることの有利・不利という形で、はっきりと現れる。社会的な評価が高く希少価値のある大学・学部学科の場合、入学は相変わらず(考えようによっては、昔以上に)難しいが、就職活動の際には非常に有利に働く。他方、社会的な評価が低い大学の場合は、入学はた易いが、卒業しても単に大卒というだけで、就職活動に際して有利に働かないばかりか、かえって高卒に比べて年齢を取り過ぎていることが逆効果になる場合すらある。現に2014年3月時には、大学卒業者の12%が卒業しても就職も大学院への進学もできない「無業者」になっており、アルバイト等の一時的就職者を加えても19%の者が安定した雇用に就いていないのである(※)

 したがって高校生の君は、単に合格し易いかどうかで受験校を選ぶのではなく、大学卒業後のことを考えて、少しでも社会的な評価が高く希少価値のある大学・学部学科を目指さなくてはならない。大学入試を乗り切るのは、いつの世も容易ではないのである。                      (※)文部科学省「学校基本調査」より

 

 Heaven Helps Those Who Help Themselves ! (天は自らを助くる者を助くる)

 

2  大学合格のためにやるべきこと
 では君は大学入試に向けてどのように準備していけば良いであろうか。上で、大学入試には一般入試と推薦入試があることを述べたが、このことは言い換えれば、多くの場合同じ大学・学部でも2回受験することができるということである。したがって、君は、まず推薦入試合格を目指しつつ、一般入試でも合格できる学力も身に付けておかなければならない。具体的には、高校における中間テストや期末テストなどの定期テストで高得点を目指しつつ、校外模試にも対応できる実力をつけることである。
 そのためには、まず、①何より絶対的な勉強量を確保することが必要である。大学入試に合格するためには覚えるべきことが山ほどある。それらをこつこつと覚えていかなければならない。この過程において、「暗記」という努力をないがしろにしてはならない。すべての勉強は、暗記から始まるのである。特に、もし君が本命とするのが一般入試ではなく推薦入試合格ならば、高校の定期テストは出題範囲が決まっており、こつこつ暗記するだけで高得点も可能であり、それだけで大学合格の可能性が高まるといえよう。
 「何~だ」と思うかもしれないが、侮ってはいけない。この「こつこつ覚える」という作業を継続してできる生徒が意外に少ないのである。もともと人間は忘れる動物であり、覚えることは忘れることとの戦いなのである。覚えては忘れ、忘れたら覚える。この作業には忍耐と時間が必要である。他人より成績が良い人は、同時に「こつこつ覚える」という地道な作業ができる人、すなわち他人より勉強量が多い人なのである。優れた成績の背後には、必ず地道な努力の積み重ねがあるのである。
 次に、特に一般入試で合格を勝ち取るためには、こつこつ覚える作業と同時に、②論理的思考力を養うことが大切である。論理的思考力とは、与えられた問題に対処するに際して、自分が持っている知識をフルに動員して、それを積み上げ、整理し、検討して、最良の答を導き出す能力であるが、この能力がないと入試の本番で自分が過去に解いたことのない問題に出くわした場合にはとても太刀打ちできない。実は、入試問題は一見見たことのない問題に見えても、所詮は基本問題の応用に過ぎないのであるが、論理的思考力のない生徒にとっては、とてつもない難問に思えてしまうのである。
 論理的思考力を養うためには、普段から安易に他人に頼らず、自分の頭で考えて問題を解き切る習慣を身に付けることが大切である。具体的には、日頃の学習の時から、わからないからと安易に参考書の模範解答に頼るのではなく、まずは教科書の該当部分に立ち戻り、理解した上で、その問題をたとえ時間がかかっても自分の頭で考え、悩み、考え抜いて答えを導き出す癖を付けよう自分の頭で考えることは、模範解答を覚えることより何倍も大変であるし時間もかかる。1日中考えても1 題の問題も解けないことも普通にある。自分の頭で考えている時間は、エンピツが動くわけでもなく、一見無駄な時間のように思えるかも知れない。しかし、そのじっと我慢して粘り強く考えている時間こそが大切なのである。これを経ることによって徐々に思考力が養われ、正解を導き出す能力、すなわち本当の学力が身に付くのである。


 iCS石川東大塾では、論理的思考力を養うための勉強を大切にした指導を行います。